闇の中…
森の中…
一人の男の息遣いと足音だけが聞こえる。脱獄囚は一刻も早く捜索範囲から逃れようと必至だった。
彼は騎士ストライク。帝国ザフトにつかえる戦士にとって最高の位である「レッドスーツ」の称号を持ち、王国騎士団長を務めていた。しかし、それもすでに過去の話である。
数 日前、国王シーゲルが連合国に対し戦争を仕掛けることを独断で決定した。それに反対した騎士ストライクは、謀反を企てたとして捕らえられたのである。そし て、明日の死刑執行を控えた夜、大臣パトリックの息子であり、彼が率いる騎士団の若き騎士「アスラン」の手引きにより城を脱出したのである。
「脱 出をするなら連合方面は警戒が厳重で危険です。ザフトにも連合にも属していないオーブに逃げてください。国境のヘリオポリス村に私の幼馴染のキラというも のがいます。これは彼宛の手紙です。これを見せれば力になってくれます。詳しいことは手紙を読んでください。時間がありません。さ、速く。」
大分小さくなった城から、多数の松明の明かりが漏れている。もう逃亡者の捜索が始まっているようだ。
「あの、やさしかったシーゲル王がどうして…」
小さいころに両親を失っていた騎士ストライクにとって、シーゲル王は小さいころから公私ともに世話をしてくれた、いわば親代わりのようなものであった。それだけに、ここ最近の彼の豹変振りには少なからず疑問を感じていたのだ。
と、突然足音が聞こえてきた。
「速い!人間ではないな!?」
と、判断するよりも早く、それは飛び掛ってきた。
「バクゥ!追手はデュエルか!!」
バクゥは槍騎兵デュエルが鍛え上げた軍用犬である。槍騎兵デュエルは訓練のときはいつもバクゥと行動をともにし、バクゥとの連携攻撃にはいつも舌を巻いていた。バクゥを使うということは彼がすぐ近くにいるということである。
「く、早くなんとかしないと勝ち目はない」
バクゥの攻撃を捌きながら対策を考える。だが、それも無駄な行為だった。すでに青い槍兵は、そこに到着していたのだ。
「謀反とは、また大層なことを考えたものだな」
「まて、俺は謀反など考えてない!」
同じ「レッドスーツ」の称号を持ち、歩兵師団長を務める槍騎兵デュエル。今、騎士ストライクの装備は2本のナイフのみ。武器があるならともかく、ナイフのみそれも2対1では勝ち目はない。説得して見逃してもらうしかない。しかし…
「お前も最近王の様子がおかしいことはわかっているだろう!」
「ふ、仮にお前の言い分を認めたとしても、お前の謀反の罪が消えるわけではない!」
「デュエル!!」
「できれば、お互いベストの状態で決着をつけたかったが仕方あるまい。」
槍 を構える槍騎兵デュエル。騎士ストライクにとって、槍騎兵デュエルの王への忠誠の高さはいつも感心していたが、彼の頭の硬さにはいつも困っていた。普段か ら王の命令は絶対であり、彼のほうから意見することはなかったのだ。謀反の罪を着せられた今、そんな彼を説得するのはほぼ不可能だろう。
槍騎兵デュエルとの戦闘を覚悟したそのとき、
「ちょっと待ちな!」
一同がその声の方を向く。そこには一人の見知らぬ男が立っていた…
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